パーキンソン病とポリファーマシー(多剤併用)は、多くの治療薬が出てきた現在、重要な課題です。以下に、その関係性と問題点、注意点を解説します。
パーキンソン病は、ドーパミンを作る脳の神経細胞が徐々に減っていく進行性の神経変性疾患です。主な症状は以下の通りです。
- 振戦(ふるえ)
- 筋固縮(筋肉のこわばり)
- 動作緩慢(動きが遅くなる)
- 姿勢反射障害(バランスが取りにくくなる)
治療の中心はドーパミン補充療法(例:L-ドーパ製剤)ですが、症状に応じて他の薬剤も使われます。 ポリファーマシーとは、必要以上の薬を併用する状態を指します。高齢者や慢性疾患患者で起こりやすく、副作用や薬物相互作用のリスクが高まるため問題視されています。
パーキンソン病におけるポリファーマシーの問題点
- 薬剤数の増加パーキンソン病では、運動症状だけでなく非運動症状(うつ、不眠、便秘、幻覚など)に対する薬剤も必要になりやすく、服薬数が自然と増える傾向があります。
- 薬物相互作用のリスクたとえば、抗精神病薬の一部(リスペリドンなど)はドパミンを遮断する作用があり、パーキンソン病の症状を悪化させる可能性があります。
- 副作用による悪循環例:L-ドーパの長期使用によりジスキネジア(不随意運動)が生じ、それに対処するためにさらに薬が追加される。
- 認知機能障害との関連抗コリン薬などは高齢者の認知機能を悪化させることがあり、注意が必要です。
- 服薬アドヒアランスの低下多剤併用は服薬の自己管理を困難にし、服薬ミスが増える可能性があります。
対応策・工夫
- 定期的な薬剤見直し
- 医師・薬剤師・看護師のチーム医療によるフォロー
- 症状ごとの薬剤選択を慎重に
- 非薬物療法(リハビリ、運動療法)の併用
- 服薬支援ツールの活用(お薬カレンダーなど)
- まとめ
パーキンソン病では、進行や多様な症状によりポリファーマシーに陥りやすく、それが新たな健康リスクとなる場合もあります。適切な薬物管理と多職種連携が重要です。
✅パーキンソン病患者のためのポリファーマシーチェックリスト ①薬剤の全体把握
- 現在飲んでいる薬(内服・貼付薬・点眼薬など)をすべてリスト化している。
- 医師・薬剤師にすべての薬の情報を伝えている(市販薬・サプリも含む)。
- 同じ効果の薬が重複していないか確認した。
②有害事象・副作用のチェック
- めまい・転倒・ふらつきが薬によるものかもしれないと説明を受けた。
- 幻覚や妄想、不眠、興奮など精神症状が薬剤の影響で悪化していないか確認した。
- 消化器症状(便秘、吐き気など)や排尿障害が薬に関連していないか評価した。
- 認知機能の変化に気づいたら、薬の影響を疑って相談している。
③処方の適正評価
- 長期間使っている薬が本当に必要か医師と相談している。
- 症状が落ち着いている薬は減量・中止の可能性を検討している。
- 抗コリン薬など、高齢者にリスクがある薬を必要最低限にしている。
- 薬を増やす前に、他の方法(リハビリ・環境調整など)を検討した。
④薬物相互作用の確認
- パーキンソン病治療薬と他の薬の相互作用リスクをチェックしている。
- 抗精神病薬・制吐薬など、ドパミン遮断作用のある薬の使用は避けている。
- 他院・他科で処方された薬も情報共有されている。
⑤服薬管理の支援
- 飲み間違いや飲み忘れがないように服薬カレンダーやピルケースを使っている。
- 服薬タイミングが複雑になっていないか、簡素化を検討している。
- 定期的に薬剤師による服薬指導・薬の整理を受けている。
⑥チーム医療・本人参加
- 本人や家族が薬の内容と目的を理解している。
- 医師・薬剤師・看護師などの連携が取れている。
- 自分の症状と薬の関係に関心を持ち、質問や相談をしている。
このチェックリストは、通院時や薬剤師との面談時に活用する事で、不要な薬の削減、副作用の予防、生活の質の向上につながります。 かつて当院に勤務していた中坂先生が名著を書かれています。
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